- おん
- I
おん【唵】〔梵 oṃ〕インドで古来より聖音とされ, 祈りや経典の最初に唱えられる言葉。 密教に取り入れられ, 真言や陀羅尼(ダラニ)の頭首に置かれる。IIおん【御】〔「おおん」の転〕(1)名詞に(古くは, まれに用言にも)付いて, 尊敬の意を添える。
「お」よりあらたまった感じがある。 「~身」「~礼」「~みずから」「日比も~恋しく思ひ奉りつれど/発心 3」
(2)中古には, 下にくる名詞を略して単独で名詞のように用いることがある。「ふみなど講ずるにも, 源氏の君の御(=「御詩」ノ略)をば, 講師もえ読みやらず/源氏(花宴)」
〔(2)は「御」と漢字で表記され, 「おん」と読まれることもあるが, 中古のこのような例は「おおん」と読むべきであるといわれる〕IIIおん【恩】(1)他の人から与えられためぐみ。 いつくしみ。「御~は一生忘れません」「親の~」
(2)封建時代, 家臣の奉公に対して主人が領地などを与えて報いること。(3)給与。 手当。「~をもせで, はなれんことこそ無念なれ/曾我 9」
→ 御恩~に掛・ける「恩に着せる」に同じ。~に着・せるちょっとしたことを, ことさら相手のためにしたように言う。 恩に掛ける。~に着る恩を受けたことを有り難く思う。~の腹は切らねど情けの腹は切る恩に報いるために身を捨てる者は少ないが, 義理人情のために身を捨てる者は多い。 恩の死にはせねども義理の死にはする。~を仇(アダ)で返・す身に受けた恩に感謝するどころか, かえって害を加える。⇔ 仇を恩で報いる~を売・るのちのち自分の立場を有利にしたり利益を得たりする目的で人を助ける。IVおん【蔭】⇒ 蔭位Vおん【雄】おす。⇔ めん「~どり」VIおん【音】(1)おと。「響きのよい~」
(2)人間が言語として使うために口から出すおと。 言語音。(3)日本での漢字の読み方のうち, 漢字音。 字音。⇔ 訓「~で読む」→ 漢字音(4)中国における漢字の音声のうち, 語頭子音。⇔ 韻(5)音楽。
Japanese explanatory dictionaries. 2013.